体験記1

体験記1

肺癌の腰椎転移による腰の痛みがひどくなってきた一人暮らしの伯母の治療に、知人から在宅の緩和ケアの先生を紹介してもらいました。

7年前に、夫を同じ病気で亡くしており、10ヶ月にわたる病院での不自由な生活、外泊も認められなかったので「家に帰りたい」という夫の思いを叶えてあげることができなかったため、伯母もいつかは病院に行かなければならないかといつも心配していました。

その伯母も腰の痛みがひどい為、ほとんど自力で立ち上がる事ができなくなり、病院や近所の医院でもらっていた痛み止めでは全く改善されない状態になっていました。いよいよ入院を考えなければならない時期がきてしまったのか。

私たちも伯母もそう考え始めたときに先生に出会ったのです。 最初は「本当に家に先生がこられるの?」「病院と同じ治療をしてもらえるの?」という気持ちでした。 でも、先生がやって来られた日から、内服薬の調節をしてもらい点滴等の治療のおかげで伯母の痛みは軽くなり、自力で立ち上がって歩く事ができるようになり、先生が来てくれるのを楽しみに待つようになりました。

また、伯母の薬が増えるのはイヤという気持ちをいつも優先して極力薬が増えないようにしてくださり、また外出等の予定に合わせても体調管理をしていただけたので、旅行や外食、コンサートなどのイベントを楽しめるようになりました。 先生は伯母にいつもゆっくりと丁寧に、その日の様子を直接聞いてくれました。時には先生・患者の関係を忘れて、趣味などの話で大いに盛り上がる日もありました。

そんな様子を見ていると「痛みのコントロールをしてもらい、楽しく安心して毎日を過ごせるように心のケアもしてもらえる…これが在宅医療というものなのだなあー」と思い始めました。 自宅でTVを見ながら、またお友達とおしゃべりをしながら点滴を受けていた伯母はとても楽しそうでした。

最後の時を迎えた伯母は亡くなる数時間前まで会話をしながら、最後まで人としての尊厳を失う事なく自宅で安らかに息をひきとりました。